2: C3コルベットのリアアームリビルドについて
[C3] A Pictorial Guide To Rebuilding 1963-1982 Torque Arms



私がここ "Corvette Repair" で提供しているサービスのひとつがリアコントロールアーム・アッセンブリーのリビルドです。原則としてはそれはただ単に「リアホイールベアリングとシールを交換するだけ」のように思われがちなのですがその車の年齢や、その車がこれまでにどんな整備を受けて来たか、といった要因によって実際の作業にはそれ以上のものがあります。

ほとんどの人々は「新しいリア・ホイール・ベアリングに交換して下さい」とだけ注文してコルベットを持込んで来ます。そして我々はリアコントロールアームをアッセンブリーで取り外して作業台の上で部品一個一個をバラバラにしてリビルドした上でまたアッセンブリーとして車に取り付ける事になります。そしてリア・アライメントを調整して仕事は終了となる訳です。

そう、全くもって簡単な作業に思えますね。そして人々はこう尋ねます。

「一体全体どうしてこんなに作業賃が高いんですか?」

「リアホイールのベアリングを交換するのに一体何でそんなに作業が必要なんですか?」

そうなると私も「例え通常の整備だろうとフル・レストレーションだろうと、こと自分たちのコルベットに関しては可能な限りベストな作業をしてくれって言うお客さんは多いんですよ」と言わなければならない訳です。

そんな訳で殆どの人々がリア・ホイール・ベアリングを交換するのに実際にはどんな作業が伴うものなのかを知りたがっていますから、私は今回、その作業完了までの手順についての基本的なアウトラインをここに作ることにしました。以下の写真はそのステップごとに伴う作業についてのものです。解説に関しては余り微細な部分に立ち入らないよう、シンプルに説明するように心掛けました。

例えばリア・スピンドルのベアリングレースを外す工程では10トンのプレス、ベアリング・スプリッター、自作の治具が必要とされます。これによってスピンドルを大きなハンマーで叩いたりトーチでベアリングを焼き切ったりしなくても済み、作業はウルトラスムーズになります。適切なツールを持ってないショップはみんなそうやって外しているのですが。

また、スピンドルの最終組立て時に適正な遊びでスピンドルをセッティングする方法の詳細などについても特に言及しませんでした。それらの方法についてはコルベットのサービスマニュアルにきちんと説明されているからです。しかしながら、もし疑問点などがありましたらそれについて私あてにe-mailを下さい。より詳しくご説明しましょう。

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リア・コントロールアーム関連の部品図
註:拡大画面のダウンロードには少々時間がかかります



1)上が1965年式から1981年式までのディスクブレーキ付きコルベットから外したリア・コントロール・アームの典型的な例。1963〜1964年式でも原則的には同じですがブレーキがドラムなのが異なる点です。アームや鋳造部品のデザインには年式によって多少の違いはあるのですがどの年式のC2〜C3であっても大差は無いのでこのウェブページの説明で充分応用可能です。

上の二つのアームは程度上々の1967年式コルベットから取り外したものです。一見したところ随分サビだらけで表面がゴワゴワの様に見えますが、後述の通りサンドブラストをかけて清掃してみたところ、外観上は全然程度が悪くないものだという事が判りました。ただし目に見えない部分に深刻な問題が隠されています。それについては以下を続けてお読み下さい。






2)上の写真はコントロール・アームを分解する前にブレーキローターの「振れ」のチェックをしているところ。この作業が再組立てするときのヒントとなるのです。

振れの程度が激しい場合、いくつかの理由が考えられます。タイヤが縁石などに激しくヒットしてリア・スピンドルが曲がってしまっているかも知れない。振れの程度によってブレーキ・ローターのコンディションがどんなものかを知ることが出来ます。

例えばもしローターの振れがたかだか0.05ミリから0.08ミリ程度であるのならスピンドルは多分大丈夫。そして今ついているブレーキローターとセットで再使用すること。もしベアリングがゆるゆるでまともに振れが計測出来ない場合はさっさとコントロールアームの分解作業を進めること。






3)最初のステップは上の写真にある通り、まずブレーキ・ローターをスピンドル端面に固定しているリベットをドリルで揉み取る事。これは実に単純な作業ではあるものの、良い結果を得るためにはそれぞれのリベットの真ん中にきちんとドリルの刃を立てることが非常に重要です。

ちなみに今日の時点でGMの工場を出て来た時にリベットでブレーキローターがかしめられたままの67年式コルベットというのは誠にレアと言えますね。






4)上の写真はリア・スピンドルをプレスで抜き取った後のベアリングサポートとパーキングブレーキユニットがどのような状態であるかを示しています。






5)上はリア・コントロール・アームが完全にバラされた状態を示すなかなか良い写真(洗浄前)。この時点で私は全てのパーツをチェックします。リア・コントロール・アームは治具に取り付けられて曲がりがないかどうかチェックされます。スピンドルはまず目視検査をして、その後、旋盤のセンターに取付けて「振れ」を検査することになります。






6)上は定盤上でリア・ブレーキ・キャリパー用ブラケットが曲がっていないかどうかを検査しているところ。






7)このスピンドルの目視検査からは二つの事が判ります。
一つめ。このスピンドルを前回外したのは誰だか知らないがそいつはトーチ(バーナー)を使ってベアリング・レースを焼き切ったという事。目を近付けてじっくり観察すればベアリング・レースのコンタクトする部分に「彫り傷」が発見出来るはずです。この傷を発見した場合はそのスピンドルは捨てるしかありません。

二つめ。ベアリングのインナーレースがスピンドルの軸上で回転した痕があります。これではプレスで押し込んでもベアリングのインナーレースはフィットしません。これもまたこのスピンドルを捨てるに充分な理由となりますね。







8)さてこれは何だろうか?そう、もう片方のスピンドルのベアリング・インナー・レースも軸上で回転しはじめています。このスピンドルも捨てるしかありませんね。

スピンドルの検査でベアリング・インナー・レースの回転痕やバーナーの痕を発見するのは実に良くあることで、これがリア・コントロール・アームのリビルドが高価な作業になる最大の理由です。精度の高い交換用スピンドルは値段も高い。世の中には品質の悪い輸入ベアリングやらブッシュやら何やら色々なパーツがありますがこれらを使うのは避けて下さい。さもないとあなたは程なくして再びコントロールアームのリビルドをする羽目になるでしょう。






9)上はバーナーでベアリングを焼き切ったスピンドルの傷のクローズアップ






10)リア・アームが曲がっていないことが確認出来たら次はそのアームのブッシュをドリルで揉み取りましょう。写真で見る限りこのアームは随分ボロボロに見えますが実は見た目ほどには状態は悪くありません。






11)いい眺めですね。各パーツの洗浄前の写真とこの洗浄後の写真とを見比べて下さい。銀色に輝くパーツ(ベアリングサポートなど)はこれが本来の色なのです。熱油タンクでボイルしてサンドブラストするとこうなる訳です。

(訳者註:ボーリング屋さんなんかでもそうですが、油を満たした釜で汚れたパーツをグツグツ煮ると汚れが良く落ちます)。

全てのパーツを洗浄した後、鋳造部品を再度、曲がっていないかどうか、クラックが入っていないかどうかチェックします。アームに関しては溶接部分に割れがないかどうか、内部に錆びがないかどうかに関してじっくりとチェックします。OKを出すまでには本当に何度もひっくり返して検査する訳です。






12)上はコントロールアームに新しいブッシュが組込まれてサイドが正しくフレア処理されるとこうなるという見本。






13)さて、これが洗浄されて最終チェックを受けたパーツが全部揃ったところ。新たに加えられたものは私が「リア・アーム・パーツ・キット」と呼んでいるもの。キットにはリア・アーム・アッセンブリーのリビルドに必要とされる全てのニュー・パーツと新しいパーキング・ブレーキの部品が含まれています。右側の二つ、新品のスピンドルにも注意して下さい。スピンドルに関しては必ず最高の品質のものだけを使用すること!






14)スピンドルとベアリングとシール類を取付ける直前のリビルト・リア・アームはこういう状態です。新品のパーキングブレーキのパーツが美しいですね。






15)最終組立て。インナーベアリングを正しい位置にプレスで圧入します。






16)スピンドル・フランジが正しい位置に取り付けられてリア・アーム・アッセンブリー一式が完成します。






17)この写真を御覧いただきたい。注意すべきことは二つ。

(その1)
ブレーキ・ローターの「振れ」を計測する時、実際にホイールをはめた状態を再現するためにローターに必ず「トルクプレート」(当て板)を当ててホイール・ナットを5本全部締めてから行うこと。この方法で振れを測ることが大事です。ローターを適正なトルクでスピンドルに押し付けた状態でないと正しい「振れ」の計測は出来ません。

(その2)
ブレーキ・ローターを回転させた時のダイヤルゲージの読みが最大でも1.27ミリ以内であること。振れ幅がそれ以上ある場合はシムで調整する事。さもないとブレーキにエア混入などのトラブルが起きる可能性があります。


さて、ここでこのリアコントロール・アームにどんな作業を行ったかざっと振り返ってみましょう。
・車体からリアコントロールアームを外す
・全てバラバラにして検査する
・リアースピンドルがダメだったので2本とも交換
・新品のパーキング・ブレーキのパーツを組込み
・全てのパーツをサンドブラストして、洗浄して再塗装する
・新しいベアリングとシールを取付け
・ブレーキローターの「振れ」のチェック
・全ての部品を再組立てして再び検査
・リア・コントロールアームを車体に組付け
・コルベットの事が良くわかっているアライメントショップでアライメント調整

つまり、一見単純で簡単なベアリング交換作業に思えるものが実は「リペアの必要に迫られた34年もののリアコントロールアームの完全オーバーホールとなってしまった」という訳です。随分と手の込んだ作業になりましたが、この手のビンテージ・コルベットを再び安全でファン・トゥ・ドライブな車に仕上げるために必要とされる作業としてはこれは典型的なものでもあります。

はるか昔にどこかよそのショップが犯したミス(今回の例の場合、バーナーで焼いたスピンドルの事ですね)をリカバーするというのも良くある話です。それでなくてもベアリングというのは元来磨耗して行くものですからその車の前オーナーが交換すべき時に交換していなかったらベアリングの磨耗が進んで高価なリアスピンドルをダメにしてしまうでしょうね。

この作業によって発生するコストは、その車のリアコントロールアーム関連についてそれまでに行われた作業がどの程度のクォリティだったか、どの程度の回数だったか、によって変動します。だからリアコントロールアーム関連の作業の見積と言うのは難しいのです。リア・スピンドルのダメージ、パーキングブレーキのパーツのダメージ、ブレーキローターの振れ、リアコントロールアームの曲がりなど・・。これらのバラしてみないと判らないトラブルが隠されている可能性が非常に大きいですからね。

尚、リア・コントロールアームを取り外す時や取り付ける時、リア・サスペンションの部品(ブッシュ、ショック、スプリング)、ブレーキ部品(キャリパー、ホース、パッド)、ハーフシャフト(Uジョイント、ヨーク)などの周辺についても何かトラブルの兆候がないかどうか目視検査をするのは非常に賢明と言えます。

(March, 2002)


Copyright:David Herlinger
Herlinger's Corvette Repair
(650)-969-5351
1230 Pear Ave. #3
Mountain View, CA 94043
The original article is at:
http://www.corvetterepair.org/
http://www.caspeed.com/
by Allen Woolley