

![]() | ではロールバックとはそもそも何でしょうか?以下、簡単に説明します(御存じの方も多いでしょうがしばらく我慢して下さい)。左の図はC3と同じ対向ピストンのブレーキキャリパーです。ディスクブレーキの動作原理を知らない人はいませんね?キャリパーのシリンダボアとピストン裏側で作られた空間はブレーキフルードで満たされており(図の水色の部分)ブレーキペダルを踏むとここにさらに高圧のブレーキフルードが流れ込もうとして室内全体の圧力が上がってピストンを矢印の方向に動かし、ピストンはパッドをローターに押し付け、ローターには制動力がかかる、と、こういう誰でも知っている仕組みですね。 ここでピストンが動くのを許しつつ、高圧のフルードを漏らさないようにしているのが「ピストンシール」です。考えてみればこのピストンシールにかかる負担は大変なものです。パスカルの定理(でしたっけ?)によればブレーキが踏まれた時はこの弾力体たるゴム製のシールにもシリンダ内壁やピストンなどの金属部品にかかるのと同じ圧力が等しくかかる訳ですから。ちなみにキャリパーピストンのシールは普通1ポッドあたり2本あって、パッドに近い方はダストシールでパッドから遠い方、直接ブレーキフルードの圧力にさらされるのがオイルシールです。 |
![]() | で、このシールには「キャリパーの内圧をシールする」という目的の他に「ピストンの移動量をコントロールする」という役目があります。左の図を見て下さい。ブレーキをかけると当然ピストンはローター側に向かって押し出される訳ですがその時原則としてピストンはシールの内側を滑るのではなくシールを引っ張って変形させることによって移動しているのです。この変形は弾性域内のものですからブレーキペダルを解放して圧力がなくなると当然シールの変形はもとに戻りピストンも少し戻ります。これがロールバックです。このロールバック分によってパッドとディスクローターの距離を常に適切なものに保っておく、という訳ですね。このロールバックが多すぎるとピストンの戻り量が大きくなり過ぎて次回のブレーキングの時に「最初のひと踏みに手応えのない」ブレーキになってしまいますし、逆に少なすぎるとパッドの引きずりとなってしまいます。ですからこのロールバック量の管理はブレーキメーカーにとってもかなり重要な問題の様です。ちなみにパッドが減ってくるとパッドとローターの距離が離れてきてピストンの移動量がシールの変形分だけでは追い付かなくなります。そんな時にペダルを踏むとシールの変形量で追い付かない分ピストン全体がズリッとシールの内側を滑ってディスクローター側に移動しますのでまたロールバックで適正なクリアランスを保つようになる訳です。これが地球上を走っているディスクブレーキを装着した何百万台、何千万台ものクルマのほとんど全てが採用している当たり前の方式です。この方式を採用していないクルマはごく一部の例外です。ちなみにこの「ごく一部の例外」の中に我らのC3が含まれているという事は非常に悲しむべき事だと言うしかありません。 |

![]() | エアの吸込みについては前のページで説明した通りローターの振れが大きく関与しています。ローターが振れているC3というのは当然それだけの年数の経過したクルマですからブレーキキャリパーのシール類もそれ相応に劣化していると考えられます。そんな具合のC3のブレーキで何が起こっているか考えてみましょう。左の図の通りフニャフニャのシールで支えられたピストンをスプリングが裏側からディスクローターに押し付けています。ローターが振れていれば例えブレーキをかけていなくてもピストンはローターの回転に従って忠実にその振れをなぞることになります。これはピストン側から見ると年がら年中「ピストン運動」というか「ポンピング運動」を強いられている事になります。このポンピング運動は当然ピストン裏側の閉じられた室内の圧力変動をひき起こします。これがシールのリップ部からエアを吸込もうとする力になる訳ですね。で、シールはもうボロですからいとも簡単に吸込んではいけない筈のエアを吸込んでしまう訳です。これが「月に一度エア抜きをしなければならないブレーキ」の原因です。あなたが何度エア抜きをしてもすぐエアが混入するブレーキに悩んでおられるならこの辺りを疑ってみるのがいいでしょう。 |
さて、こうして頻繁にエアの混入するC3のキャリパーにおける次の問題は内部腐食です。空気には当然水分が含まれています。そして通常のブレーキフルードは吸湿性があります。つまり混入したエアに含まれる水分がブレーキフルードに吸収されてしまうのですね。ですからC3のキャリパー内部のブレーキフルードのコンディションは通常のキャリパーよりもうんと悪いという事が言える訳です。![]() | |