1-3.2: なぜ君はすぐ漏れるのか?
Why do the calipers leak?

●真夏の恐怖体験
 しばらくの間、私はその時の恐怖を何度も夢で見ました。その時、私は自分のC3、ゴージャスジョージ号で浜名湖まで快適なドライブをしてきた帰りでした。もう少しで家に帰りつくというところ。前方の信号が赤になったのを見た私はブレーキを踏みました。するとブレーキペダルは何の手ごたえもなく、
スコン
と床にまで届き、そしてブレーキは何の反応も示しませんでした。
 「ブレーキが死んだ!」と思った私は気が狂ったようにペダルを繰り返し踏み続けました。交差点はもうすぐそこです。果たして間に合うのか?

 その後の詳細はいまひとつ明解に思い出せないのですが「どうやらクルマは停止したようだ」と思って安堵したのはすでに私のC3の車体が半分ほど交差する道路にはみ出してからでした。だから正確には安堵している場合ではなかったのです。車体をはみ出させているだけでも危険なのですから。道路にはみ出た私を怪訝な面もちで大きくよけていく皆さんのクルマを見ながら「自分がこの人たちに衝突しなかったのは単なる偶然、幸運にしか過ぎない」と思わざるを得ませんでした。
 その後クルマを安全な場所に移動して落ち着いて観察しますとマスターシリンダーの前側リザボアタンクがほぼ空っぽ。そして前左のタイヤの内側はべっとり濡れていました。この時私は「この世にはフルードの漏れるキャリパーがあるのか・・」という事を初めて知ったのです。まったく今思い出しても冷汗が出てきます。


●キャリパーの構造

 左図が私に真夏の夕べの恐怖体験を味合わせてくれたC3のウンコキャリパーの分解図です。
※マルC・いちさん。「ウンコキャリパー」の命名者は確かいちさんです。いちさんのHPはここです。是非御覧になって下さい。

 さて、このキャリパー。一見すると「何だ、普通じゃん」と思われるかも知れません。私も最初はそう思いました。むしろ対向4ポッドピストンだなんて1965年デビューにしてはシボレーもなかなかやるじゃん、という感じすらあります。でも良く見ると余り見なれない部品もありますね。例えばピストンの裏にある「スプリング」は一体何のためにあるのでしょうか?こんな部品、良く考えたらC3以外では見た事がありません。またよく見るとピストンが単純な円筒形ではなく妙にデコボコしています。えーっ、キャリパーピストンつーたら普通、中空の円筒形と違うのか?と驚いてしまいますよね。
 それやこれやでじーっと見ると段々普通のキャリパーとの違いが見えてきませんか?結局C3のキャリパーと現代の標準的なキャリパーとの最大の違いはロールバックが適切にコントロールされているか否かではないでしょうか。C3(及び後期C2)のキャリパーにはロールバックでパッドとローターの距離をコントロールするという概念がなく、パッドのディスクローターに対する適正距離は分解図の「くそスプリング」でもってピストンを軽くローター方向に押し付ける事によってコントロールしている様です。


●ロールバックとは?
 ではロールバックとはそもそも何でしょうか?以下、簡単に説明します(御存じの方も多いでしょうがしばらく我慢して下さい)。左の図はC3と同じ対向ピストンのブレーキキャリパーです。ディスクブレーキの動作原理を知らない人はいませんね?キャリパーのシリンダボアとピストン裏側で作られた空間はブレーキフルードで満たされており(図の水色の部分)ブレーキペダルを踏むとここにさらに高圧のブレーキフルードが流れ込もうとして室内全体の圧力が上がってピストンを矢印の方向に動かし、ピストンはパッドをローターに押し付け、ローターには制動力がかかる、と、こういう誰でも知っている仕組みですね。
 ここでピストンが動くのを許しつつ、高圧のフルードを漏らさないようにしているのが「ピストンシール」です。考えてみればこのピストンシールにかかる負担は大変なものです。パスカルの定理(でしたっけ?)によればブレーキが踏まれた時はこの弾力体たるゴム製のシールにもシリンダ内壁やピストンなどの金属部品にかかるのと同じ圧力が等しくかかる訳ですから。ちなみにキャリパーピストンのシールは普通1ポッドあたり2本あって、パッドに近い方はダストシールでパッドから遠い方、直接ブレーキフルードの圧力にさらされるのがオイルシールです。

 
 で、このシールには「キャリパーの内圧をシールする」という目的の他に「ピストンの移動量をコントロールする」という役目があります。左の図を見て下さい。ブレーキをかけると当然ピストンはローター側に向かって押し出される訳ですがその時原則としてピストンはシールの内側を滑るのではなくシールを引っ張って変形させることによって移動しているのです。この変形は弾性域内のものですからブレーキペダルを解放して圧力がなくなると当然シールの変形はもとに戻りピストンも少し戻ります。これがロールバックです。このロールバック分によってパッドとディスクローターの距離を常に適切なものに保っておく、という訳ですね。このロールバックが多すぎるとピストンの戻り量が大きくなり過ぎて次回のブレーキングの時に「最初のひと踏みに手応えのない」ブレーキになってしまいますし、逆に少なすぎるとパッドの引きずりとなってしまいます。ですからこのロールバック量の管理はブレーキメーカーにとってもかなり重要な問題の様です。ちなみにパッドが減ってくるとパッドとローターの距離が離れてきてピストンの移動量がシールの変形分だけでは追い付かなくなります。そんな時にペダルを踏むとシールの変形量で追い付かない分ピストン全体がズリッとシールの内側を滑ってディスクローター側に移動しますのでまたロールバックで適正なクリアランスを保つようになる訳です。これが地球上を走っているディスクブレーキを装着した何百万台、何千万台ものクルマのほとんど全てが採用している当たり前の方式です。この方式を採用していないクルマはごく一部の例外です。ちなみにこの「ごく一部の例外」の中に我らのC3が含まれているという事は非常に悲しむべき事だと言うしかありません。




●奇妙な設計のC3用キャリパー

 で、左の図がごく一部の例外たるC3のキャリパー断面の概念図です。このキャリパーには"DELCO"と刻印してありますからデルコが設計したんでしょうが設計者のおっさんは何を考えたものか、今見るとずいぶん特徴的な設計です。
 左の図にも妙だと思う事を書いておきましたがその中でも特徴的なのは、ピストン側にミゾが彫ってあってそこにキャリパーシールリングがはまっており、キャリパー側のシリンダーはミゾの無い円筒形だという点です。普通はこれと逆なのです。普通のキャリパーではピストンシールはキャリパーのシリンダボア側にミゾが切ってあって(上の『きょうびのキャリパー』図を御参照下さい)、そこにシールがはめ込まれており、ピストン自身はツルリとした円筒形です。C3用キャリパーにおいてはその位置関係が逆になっているのです。
 そしてキャリパーを外してピストンの所を触ってみますとピストンがグニャグニャと動きます。これも大いなる驚きでC3以外の普通のクルマではキャリパーピストンなどは指先でひょいと触って動くとか動かないというレベルのものではないのです。例えばパッド交換などでピストンを押し戻す時などは専用の工具を使ったりウォーターポンププライヤーで「ンガーッ」と力を入れて押し戻したりするくらいのものでとても指先ぐらいではビクともしないのが普通なのです。また、シリンダボア内径とピストン外径とのクリアランス(=ピストンシール面積)もC3の場合は現代のキャリパーに比べていかにも広い。
 以上の点を考慮するとC3のキャリパーには現代のブレーキで求められる様な意味での適切なロールバックは期待出来ないという事が言えそうです。
 C3の、円環部分が広くて剛性のないゴムシールで支えられたピストンを手で触った感触からブレーキを踏んだ時に何が起こっているのかを想像してみましょう。多分裏側の圧力に従ってピストンが移動するにつれシールはビヨ〜ンと伸びて、ブレーキを離すとまたヒョイともとの位置に戻る、といった類いのしなやかな?動きを繰り返しているものと思われます。とても現代のキャリパーの様にピストン自身の適切なロールバック量をコントロールするというレベルのものとは思われません。ピストンとパッド面とのクリアランスは常にむしろ開き気味になるでしょう。ちなみにディスクブレーキにおいてピストンとパッド(裏)面、あるいはパッド(表)面とディスクローターとのクリアランスが過大だと最初(または最初の数回)のブレーキの踏みこみは「スカン」という感触のものになり余り安全であるとは言えません(最初の踏込みは過大なクリアランスをつめる為だけに使われるため)。そう考えるとピストン裏側のスプリングの意味が見えてきます。恐らくこのブレーキを設計したデルコのオヤジはこのスプリングでピストンに常にプリロードを与える事によってローターとパッドの距離を適切なものに保とうとたくらんだのではないでしょうか?

●Ready to Leak!
 さて、いかなる理由によるものか今となっては詳らかではありませんがGM及びデルコがこの様な形式のブレーキを採用した事によってC3(及び後期C2)のブレーキは二つの宿命的な弱点を持つ事となりました。それは、

1) エアおよび水分を吸込みやすい
2) リークしやすい


というものです。
エアの吸込みについては前のページで説明した通りローターの振れが大きく関与しています。ローターが振れているC3というのは当然それだけの年数の経過したクルマですからブレーキキャリパーのシール類もそれ相応に劣化していると考えられます。そんな具合のC3のブレーキで何が起こっているか考えてみましょう。左の図の通りフニャフニャのシールで支えられたピストンをスプリングが裏側からディスクローターに押し付けています。ローターが振れていれば例えブレーキをかけていなくてもピストンはローターの回転に従って忠実にその振れをなぞることになります。これはピストン側から見ると年がら年中「ピストン運動」というか「ポンピング運動」を強いられている事になります。このポンピング運動は当然ピストン裏側の閉じられた室内の圧力変動をひき起こします。これがシールのリップ部からエアを吸込もうとする力になる訳ですね。で、シールはもうボロですからいとも簡単に吸込んではいけない筈のエアを吸込んでしまう訳です。これが「月に一度エア抜きをしなければならないブレーキ」の原因です。あなたが何度エア抜きをしてもすぐエアが混入するブレーキに悩んでおられるならこの辺りを疑ってみるのがいいでしょう。
さて、こうして頻繁にエアの混入するC3のキャリパーにおける次の問題は内部腐食です。空気には当然水分が含まれています。そして通常のブレーキフルードは吸湿性があります。つまり混入したエアに含まれる水分がブレーキフルードに吸収されてしまうのですね。ですからC3のキャリパー内部のブレーキフルードのコンディションは通常のキャリパーよりもうんと悪いという事が言える訳です。

 ひとつの予防策としては頻繁にブレーキフルードを交換する、というテがあります。国産車なんかですと2年も3年も「ブレーキフルードなんて足すだけで交換なんてしたことねえや」という人も多いと思うのですがアメリカ人なんかですと「オレのC3は半年に一度は交換すると」という人もいます。これが(ブレーキエア抜き方法のページでも御説明しますが)C3のブレーキ系統全体を長持ちさせる秘訣の様です。でも通常はブレーキフルードの交換なんてつい怠りがちです。で、怠っているあいだにフルード中の水分が静かに、静かにキャリパーの内部、具体的にはシリンダボアの内側を腐食させていく訳ですね。本来シリンダボア表面は鏡のように平滑でなければなりません。表面がデコボコしていたのではいかに強力なシールリングでもフルードをシールすることは不可能です。であるのに、それでなくてもフニャフニャのええかげんなシールを持たされてセントルイス工場から堂々と世の中に出て来たC3のキャリパーのシリンダボアが腐食してしまったらどうなるでしょうか?当然恐怖のリークが始まる訳です。

 C3オーナーの集まりでブレーキに関する恐怖体験を語る人は少なくありません。私も経験者ですから「おおアナタもですか。何を隠そう実はこのワタクシもある晴れた夏の日に、かくかくしかじか・・もう恐かったのなんの」「おお、それは大変でしたねえ。あれは経験した者でないとなかなかねえ・・」などとお互いの経験を語り合って例え初対面の人とでも一気に親近感が高まります。C3のブレーキでいいのはこういったオーナー同士の親睦に役立つことぐらいで後はいいことないですね。

 リークの始まったキャリパーに関して言えばシールを交換したくらいでは直らない例が多いようです。「キャリパーボアホーニングキット」という様なものも売っておりまして、私の知人のS君もこれでキャリパーをホーニングしましたがこれも良い結果が得られるのは腐食の程度の軽いキャリパーに限られる様です。

 それやこれやでキャリパーリークに疲れた人々に抜本的?対策パーツとして良く使用されるのが「ステンレススリーブキャリパー」です。これはノーマルのボロいキャリパーをコアとして、腐食したシリンダボアの部分をボーリングアウトしてそこに腐食しにくいステンレススリーブを圧入するというものです。で、スリーブの内径をオリジナルのシリンダボアと同じにしておけばノーマルのシール、ピストンその他がそのまま使えてめでたしめでたし、という訳ですね。売られているものは外観もサンドブラストをかけて綺麗に仕上げられたもので「GM製の新品だ」と言われたら信じてしまいそうです。でも実際に作っているのはアメリカのそこらのショップのおっさんたちで"Corvette Fever"などの雑誌などを見ていますと大小いくつかのサービスショップがこれを商売にしている事が判ります。

 このステンレススリーブキャリパーで気をつけなければならないのは市場に出回っている製品の品質差が激しい、という点です。サービスショップの技術力に明らかに差があるようでいいものはいいが悪いものはとことん悪いというアメリカの工業製品特有の癖があるのです。良く聞く話が「キャリパーに埋め込んだステンレススリーブの外周部からフルードがにじみ出してくる」というものです。対策した部品がこれでは何にもなりませんね。ボーリングの寸法管理もいい加減なら、ライナーの圧入もいい加減、技術もいい加減、という事でしょう。アメリカ製品には時々こういう呆れる程「技術と言うものを心底バカにした製品」があります。理由は判りませんが日本人なら絶対作らない様な恥ずかしい製品が堂々まかり通っている事があるのです。余談ですがPL法というものがそもそもアメリカにおいて立案・可決されるに至ったのもこうした背景があっての事と思います。あんな製品作るやつらを放置しておいたら死者続出ですからね。

 一般にステンレススリーブキャリパーで品質がいいと目されているのは"Vette Brake & Products" (VB&P) という会社の製品です。この会社は御存じの方も多いと思いますがコルベットやカマロなんかのサスペンション製品その他でも有名な会社です。ネームバリューもあるしカタログを見てみてもなかなか真面目な内容でまあきちんとした仕事をしてるんだろうな、という感じです。日本人でもアメリカ人でもVB&Pを勧める人は多いです。この会社のキャリパーは外観が金色で "VB"という図案化した刻印がしてあるのでそれと判別出来ます。

 しかしながら、しかしながら、誠に申し上げにくい事なのですが、私の購入したこの会社のステンレススリーブキャリパーは半年でリークが始まってしまいました。この時のリークはピストンシールではなくキャリパーハーフの合わせ目(対向ピストンのキャリパーは左右のユニット《キャリパーハーフという》の最中合わせです)からフルードが噴き出してくるという珍しいものでした。珍しかろうが珍しくなかろうがリークはリークです。この時の私の失望を想像していただけるでしょうか?ちょうどこの頃は私のC3、ゴージャスジョージ号に悪夢の様なトラブルが続発していた時期でもあり失意と怒りから正気を失った私はそのキャリパーを「アメリカ人のバータレ!ファッキン・ステューピッド・アメリケーン!」などと叫びながら近所の矢田川に思いっきりボッチャーン!と投げ捨ててしまいました。飛び上がった飛沫が夕焼けに映えてとても綺麗だったのを覚えています。「もうアメリカ製品なんて信用するものか、もうアメリカ人なんて信用するものか」と呟きながらいつしか美しい夕焼けが涙ににじんでいったのでした。ちなみに不法投棄は違法行為ですので良い子の皆さんはマネしないようにしましょう。

 こう言うと矛盾するようですがそれでも私はVB&Pの製品を推薦します。というのもその後色々と情報を集めましたがVB&Pのブレーキでエライ目にあった、という人は日本人、アメリカ人を通じて私以外にはひとりもいなかったからです。それにひきかえ某社より購入したブレーキキャリパーについてはリークした、という話を何度か聞きました。VB&P製品と某社取り扱い製品との間には聞き取りサンプル数に対するトラブル発生率には大差が認められます。圧倒的にVB&Pが優秀です。そうなると私のVB&P製キャリパーがフルードを噴き出したのはただ単に私が不幸の星のもとに生まれていただけという単純な理由によるものかも知れません。そうなると一方的にVB&Pを責めるのもいかがなものか、という気もして来ます。さらに冷静に考えてみるとあの時、私のブレーキローターは末期症状の振れ方であり、その点でもキャリパーにとっては苛酷な条件にあったと言えるでしょう。あるいは左右のキャリパーのブレーキライン合わせ目にはめ込むOリングがたまたま不良品だったのでしょうか?あるいは左右のキャリパー合わせ目の面研時のフライスの当て方に微妙なミスがあったのでしょうか?いずれにしても当のキャリパーが矢田川の藻屑となってしまった今となってはこれは日本コルベット史上、永遠かつ最大級のナゾとなったと言っていいでしょう。いや、そんな気がするだけですが。

 またVB&P製キャリパーの美点として「Oリング使用」という点が挙げられます。これはキャリパーごと不法投棄してしまった私にはいまひとつ良く判らない(中身を確かめてない)のですが従来のキャリパーピストンのシールリングに「Oリング」なるものを使用しているといううたい文句なのです。「円環状のゴムリングはみなOリングと違うのか?じゃあノーマルのキャリパーについてくるシールは何リングって言うんだ。正気かこのアメリカ人?」と私などは思うのですが何人かのアメリカ人が言うことから察するにただのOリングではないらしい。思うに、オートバイのフロントフォークのテレスコピックシールの様に一見ゴム製で良く見ると「締付け用」のスプリングが埋め込まれている様な何か特別なものなのかも知れません。これはVB&Pで単体でも売っています。何だかいいらしいですよ。確かに私のキャリパーもキャリパーピストンからブレーキフルードが漏れて来た訳ではなかったのでこれも「Oリングデザイン」のお陰かも知れません。

 何だか余談が長くなってしまいましたのでここらでC3のキャリパーについて強引にまとめてしまいましょう。


1) C3のキャリパーは本来はなかなか強力なものである

2) ただし設計上、残念ながらC3のキャリパーは構造上エアを噛みやすく、腐食しやすく、リークしやすい構造を持っている。これは数年単位のサイクルで顕在化する

3) これを避ける、あるいは発症を遅らせるにはマメなフルード交換など消極的な方法しかないようである

4) しかしながらいったんリークの症状が現れたらシール交換、ホーニング処理などの対症療法的な処置では完治は困難と思われる。イタチごっこ的、あるいはモグラ叩き的なブレーキの連鎖トラブルに悩まされる事も多い

5) 現状で最高の方法は「最上のステンレススリーブキャリパー」に交換する事ではないかと考えられる。粗悪なステンレススリーブキャリパーは逆効果なのでどこのキャリパーを購入するかには充分留意する事。またその場合ディスクローターのコンディションにも充分注意を払い、場合によってはローターの全交換すら考慮の対象としたい。さもないと折角の「最上のステンレススリーブキャリパー」も実力を発揮出来ない恐れがある。長く乗る事を考えるなら何度も同じトラブルを短期サイクルで繰り返すよりいったんブレーキ系統を新車時並みに戻しておく事は充分意味があると考えられる

6)さらに、 一生乗るつもりなら将来的にはブレンボ、ウィルウッドなどの社外品ブレーキへの変更も考慮するのも意味があると思われる。これに関しては私自身研究中です



 それにしてもこのキャリパーの設計のせいでその後のC3オーナーの多くがブレーキには悩まされる事になった訳で「いったい何でこんな設計をしたんだ?」とこぼしたくもなるところです。ただ「当時としては仕方なかったのかな?」という印象もあります。というのもこのブレーキのデビューは1965年。同時期の世界のクルマを見てみるとまだまだドラムブレーキ全盛の時代のようで、ディスクブレーキを装着したクルマ自体が少数派もいいところ。ちょっと調べてみてもポルシェ911、ジャガーE、ベンツの280などそれこそ世界の名車といわれるクルマたちがようやく標準でディスクブレーキを装備してきたかな、という時期です。結局デルコに限らずどこのメーカーもディスクブレーキ設計に対する経験、ノウハウが不足していたのではないでしょうか。ディスクブレーキも現代のブレーキキャリパーの様な方式に落ち着くまでには様々な試行錯誤があったはずで、その点、我らがC3のキャリパーはまさにその過渡期の作品と言えると思います。ピストン裏側に怪しいバネを配置する、というのもキャリパーシールの材質に自信の持てなかった当時としてはなかなかに合理的かつ野心的な設計だったのかも知れません。その時点では経年変化によってどうなるか、という事までは良くわかっていなかったのでしょう。

ただしGMが(デルコはGMの子会社)このブレーキをC4が登場するまでの都合17年ほど特に対策もせずに放置していた事は怠慢のそしりを逃れるものではないと思います。

 それでは次はマスターシリンダーその他について見てみたいと思います。