8) ビッグブロックのドライビングフィール


 以下の文章は1969年式の427ビッグブロックを搭載したC3のインプレッション記事です。出典は

"ON CORVETTE 1968-1982"
"ROAD & TRACK" March 1969
435HP Corvette

です。
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435馬力のコルベット
ロードカーというよりはレースカー

 「1968年シリーズ」コルベットも二年目を迎えた。1969年においては350ciのV8エンジンをスタンダードとし(従来は327ci)、ホイールの幅を広くして(7インチから8インチへ)トレッドを0.4インチ広くし、フレームを強化し、室内ベンチレーションを改善し、昨年ではただのドアの取っ手だったヘコミにラッチ機構を組み入れる、というような改良を受けた。これらの点に加えてプラス1.6リッターあることと、より硬い足回りがついているを除けば今回我々がテストに使用した427エンジンのコルベットは昨年テストした327と同じものである。今回のテストカーのエンジン、公道最強の427、はアルミヘッド、メカニカルバルブリフター、3つのキャブレターが装備されており、出力は435馬力を公称している。これ以外にもハイドロリックリフターを装備したよりマイルドな二つの427があり、ひとつは4バレルキャブ1基搭載で390馬力、もうひとつは2バレルキャブ3基搭載で400馬力である。また350ciモデルには300馬力モデルと350馬力モデルがある。327ciエンジン同様のV8で、トルクは327の360 lb/ft(約50kg/m)に対して両方とも380 lb/ft(約52kg/m)である。

 アルミヘッドの427エンジンは鉄製の同排気量のエンジンに比べて400ドル近く高くなるがその重さは350エンジンに比べて僅か60ポンド(約27kg)重いに過ぎない。そのエンジンは1000回転以上では大変フレキシブルで、4速でもその回転数からスムースに引っ張ることが出来る。ただしアイドリングは別で、大きなオーバーラップと大排気量のためラフでノイジーである。エンジンフードの下でのタペットノイズとファンノイズはきわめて盛大なもので、加速時に使用する6500rpmのレッドラインでの驚くべきピークパワーのために作られた2本のエキゾーストパイプからはのどの奥から搾り出すようなうなり声が聞こえる。テスト結果表が示す通り、一言で言ってこんにち、これほどの加速を見せる生産車は他にはない。そしてもし我々がドラッグ用のタイヤを使用していたら(スタンダードの8インチリムのF70-15は簡単にスピンして真っ直ぐ走れなかった)1/4マイルの加速において1秒くらいタイムの短縮が出来たであろう。テストカーの 4.11 : 1 レシオのファイナルの場合、トップスピードは4速に入れてただアクセルを踏むだけである。

 このような性能はコストとの引き換えとなる。我々の新しい「標準的市街地〜郊外〜ハイウェイ」走行燃費テストにおけるこのクルマの成績は僅か10mpg(4.23km/l)というものだった。ただこのクルマのオーナーはこのような「普通の」シチュエーションでは走らないであろうから現実にそぐわないかもしれない。我々の記憶にあるかぎりこの車は写真撮影の間に2回の満タンを要求した、たった一つのクルマである。スタンダードの20ガロンのタンクは200マイル(320キロ)しか走れない!

 またアッパーウォーターホースがオルタネーター・プーリーとずっと干渉していたのでパフォーマンステストを行うのにいくらか困難を感じた。そのトラブルを直したと思ったらまたブローした(訳者註:原文はホースがオルタネータープーリーにchafedなので直しても blow again と書いてあるので実際に穴が開いてクーラントが吹き出したのではないかと思います)。明らかに15 psi(1.05kg/平方cm)のクーラント圧力がプーリーの方へホースを膨らませたのだろうと思われる。

 427で市街地を流すのはイージーである。全然経済的ではないが。信じないかもしれないが、クラッチはミート時に少々チャタリングはあるものの、非常に重いというほどではない。シフトリンケージもうれしいことに軽く、ポジティブなものである。テストカーにはパワーアシスト・ブレーキとパワステが装備されていた。ブレーキは今年度は再調整されて感触が良くなっている(以前ほどオーバー・アシストではなく改善されている)。パワステの方は今までで試したコルベットのパワステの中ではベストのものだった。このリンケージ・アシストのパワステはいくつかの輸入車のような高レベルのものではないにせよ、今回のものに限って言えば少し軽く、以前に試したものよりよりロードフィールを感じることが出来た。

 その意図されたシチュエーションで使用するかぎりにおいてはコルベットは疑いもなく世界で最もベスト・ハンドリングなフロントエンジンカーのひとつである。その化け物じみたトルクのせいでフルスロットル時に腰砕けにならないためにリアサスペンションはきわめて堅いものでなければならない。同様に、サイドウォールの強固なタイヤを使用しないのは実際的ではない。例えばラジアルタイヤではそのサイドウォールがツブれてしまうであろう。427で体験すること、それはハードライディングなクルマでありひとたび地面がラフになるとその華奢なフレーム&ボディ構造はガタガタギコギコ騒ぎだし、独立懸架のリアサスペンションはちゃんとコーナーすれすれにはみ出しそうになるのを防いでいるのだけれどもあなたはあまりに大きいその音に恐れをなしてしまうかもしれない。この車の設計にあったふさわしい場所はスムースな道を速く走ることである。だからこのクルマよりよく走るのはZ軸周りの慣性モーメントの少ないクルマ、ミッドエンジンカーだけである。使われている幅広のタイヤもサスペンションもスムースでドライな路面のためのもので、それらはこのクルマを縦方向に激しく引っ張るが、ウェットな路面では安全とは言えず、またタイヤトレッドの寿命は通常は大変短い。フロントエキゾーストパイプと地面とのクリアランスの狭さもこの車がスムースなオンロード専用車であることに貢献すること大である。

 コルベットのベンチレーテッドディスクブレーキは少なくとも基本的なデザインにおいては世界最高峰のものである。我々の連続6回ブレーキングテストにおいてもこのブレーキは全くフェードしなかったし片効きもしなかった。80mph(128km/h)からのパニックストップテストではテストカーのリアホイールは余りに簡単にロックした。これはそのクルマ本来の性能からかけはなれた僅か75%の減速率であった。しかしリアブレーキへのプロポーショニングバルブは調整可能なので前後のブレーキバランスはより良いポイントに調整できるであろう。(前回テストしたディスクブレーキのコルベットとほとんど同じと思われる)今回テストしたプロポーショニングバルブのセッティングは、典型的なデトロイト風セッティングである。バルブを再調整して前後のパッドの減りを同じくらいにして、その上でもう一度パニックストップについて論ずるべきだろう。このブレーキは良いブレーキなので、ただ再調整が必要なだけである。我々は注意深くペダル操作すればハードブレーキングにおいてこの75%での減速度が可能なことを発見した。
(訳者註:『減速率』というのは原文では"deceleration"です。これが何を表しているのかは良く分かりませんが数値が大きいほど良いらしいです。ちなみに350ciの同年式のコルベットの同じパニックブレーキ・テストではこの"deceleration"は84%となっています。この方がコントローラブル、という事になるようです。ちなみに350も427もプロポーショニングバルブ《C3では普通コンビネーションバルブと言いますが》の設定が同じなのではないでしょうか。で、427はフロントヘビーなのでリアタイヤが早くからロック気味になるのではないでしょうか)

(中略)

 427コルベットはエンターテインメント・マシン(entertainment machine -原文のまま)であり、我々が折に触れ乗ってきたよりエキゾチックなエンターテインメント・マシンのいくつかに比べると、これはかなり粗野なマシンである。だがこれに近い性能を発揮する他のスポーツカーに比べると安価であるから我々は素晴らしい仕上げを望むべきではないだろう。公道を走らせるならもっともパワーの低いコルベットでさえそれで立派に充分使える。だが、日常のドライビングを快適なものにする非常に多くのものが最強最大のパフォーマンスを誇る427においては犠牲となる。そのかわり427はレーシングマシンとして作られたのである。