16) コルベットのVINその他のナンバー
Numbers appear in an individual Corvette


 コルベットに関する書籍は数多いですがその中にコレクター向け、レストアラー向け、エンスージアスト向けのデータとファクト中心の書籍が何冊かあります。その中でも "The Corvette Black Book" はその内容、ハンディさ、利便性などが群を抜いて優れており、別にマニアでなくても年代別にページをパラパラめくって「フムフム・・」と拾い読みしてみるのも結構興味深く、コルベットオーナー必携の書と言えるでしょう。今回はこの本の紹介を兼ねてこの本の中から "VIN" を始めとする各ナンバーについての総論の部分を抄訳しました。出典は、

"The Corvette Black Book 1953-1996"
by Michael Antonick
Michael Bruce Associates, Inc.

です。
興味を覚えられた方はどうぞ原書をamazon.comなどでお求めになって是非続きをお読みください。尚、この本は年鑑形式のようで私のは何年か前に買ったものなので1996年までしか載ってません。現行の同書は1999年版くらいまで進んでいるのではないでしょうか。



 自動車に記されているナンバーで最も一般的かつ広く用いられているものは"vehicle number" または "vehicle identification number (VIN)" である。これは "serial number"(シリアルナンバー)もしくは"body-chassis number"(車体番号)とも呼ばれる。各々の自動車のVINはその車固有のものであり、VINは一台一台のコルベットの指紋の様なものだと思えば良い。それは他のコルベットと重複する事はないのである。過去においてはいくつかの州でエンジンナンバーなどが使われたりしていたが、現在は自動車の名称と登録内容を表示しているのはVINなのである。

 VINはまずそれぞれの車の組立てに先立って割り当てられる。各々の車はその車固有の番号を順番に受取る。コルベットのVINの表示形式は長い年月の間に何度か変更を受けてきたが、どの年代の物であれそれは少なくともモデルイヤー、およびそのモデルイヤーの中で他のコルベットに対していつ頃製作されたかという事だけは判るようになっている。コルベットは1981年のある二ヶ月間にミズーリ州のセントルイス工場とケンタッキー州のボウリンググリーン(Bowling Green)工場の二箇所で同時に製作されたのを唯一の例外として、あとは常にどの年式もその年度内はひとつの工場で作られているという事実で個々のコルベットが全体の中で何番目に作られたかという事は簡単にわかる。

 VINは個々のコルベットのボディに取り付けられたプレートに刻印またはエッチングしてある。そのプレートそのものの位置は年式によって異なる。1953年式から1960年式初期まではそのプレートはドライバー側ドアポストに取り付けられている。1960年式の大半と全ての1961年式、全ての1962年式のコルベットにおいてはそのプレートはエンジン・コンパートメントのステアリングコラムに取り付けられている。1963年式から1967年式においてはインストルメントパネルのサポートにそのプレートが取り付けられているのがグローブボックス下に見える。そして警察に便宜を図る意味で法改正がなされ、1968年からはVINが車の外側から確認出来なければならなくなった。よって1968年式以降のコルベットではそのプレートはインストルメントパネルの上面かAピラー(ウィンドウポスト)に取り付けられている。どちらもウィンドウごしに外側から確認する事が出来る。

 盗難捜査、そして車体特定の輔けとするためVINはコルベットのフレームにも数カ所刻印されている。1960年以降はVINの数字の一部がエンジンブロックの助手席側シリンダーヘッドの前の平面に刻印されることとなった。

 1972年式までは1955年を除いてVINはそのコルベットがどんな型式のエンジンを持っているかを表してはいない。1972年にVINはエンジンコードを含むように改正された。1963年からは全てのVINはクーペかコンバーチブルかを識別するコードを含むようになった。

 この "Corvette Black Book" では全ての年式のコルベットのその年度最初の一台から最後に作られた一台までのVINが何番から何番までであるかを調べてある。殆どの場合ある年度内に製造されたコルベットはひとつの連続した番号体系が与えられている。

しかし例外がある。1978年のインディ・ペースカー・レプリカモデルには別の番号体系が与えられた。1981年度内に同時に二つの工場でコルベットが製造された時も同様。1986年にクーペとコンバーチブルが別々の番号体系が与えられた。そして1990年にコルベットの「ZR1」オプションが再びスタートした時にも別々の番号体系が与えられている。

 一般論として、そのモデルイヤーには一つの番号体系しかない場合、最後に作られたコルベットのVINの末尾5ケタの数字がその年の総生産台数に等しい。二つの番号体系を持つ年度の場合、二つの番号体系おのおのの最後の番号を足したものがその年度の総生産台数になる。

(訳者註:何の事か判り難いかも知れませんが、例えば1969年のVINは"194378S400001"から"194378S428566"までの連続したひとつの番号体系。これによってこの年は28566台製造された事がわかります。ところが1978年を例にとると通常のモデルは"1Z87L8S400001"から"1Z87L8S440274"までの番号体系ともうひとつ、"1Z87L8S900001"から"1Z87L8S906502"までのペースカー専用の番号体系の二つがあります。これによって通常モデルは40274台、ペースカーは274台、両方足して1978年には40548台のコルベットが製造された事がわかります)

例外は何らかの理由で4000台分VINがスキップされた1973年モデル。1973年に限り最後の一台のVINの下5ケタの数字から4000を引いたものがその年度の総生産台数となる。また、1953年から1956年に限っては最初に生産された一台のVINの下5ケタは"01001"で始まっている(訳者註:他の年度は"00001"で始まります)。これらの年式の場合はその年度最後に作られた一台のVIN下5ケタの数字から1000を引いたものがその年度の総生産台数になる。

 フリント(Flint)、セントルイス(St. Louis)、ボウリンググリーン(Bowling Green)といったコルベットの「プラント(工場)」はコルベットという車の「組立て工場」であるという事を理解するのは重要な事である。コルベットのエンジンはその組立て工場と同じ場所で作られた事は一度もない。エンジンはGMのラインナップにある他の車のエンジンも作っている別のエンジン専門工場で組立てられる。

 コルベットの場合エンジン工場の特定は非常に簡単である。1953年に使われた6気筒エンジン、全てのコルベット用「ビッグブロック」エンジン、そして1980年のカルフォルニア仕様コルベットに使われた305ciのエンジン、以上は全てニューヨークのGMトナワンダ(Tonawanda)エンジンプラントで製造された。1990年からスタートしたZR-1モデル専用のLT5エンジンの製造はオクラホマのスティルウォーター(Stillwater)にあるマーキュリー・マリーン社(Mercury Marine)に委託された。1954年と1955年の6気筒エンジン、そして他の全てのコルベットのスモールブロックV8はミシンガンのGMフリントエンジン工場で製造された。

 エンジン工場でコルベットのエンジンが組立てられると重要なナンバーがエンジンブロックに刻印される。1953年から1955年までの6気筒エンジンの場合、その番号はデスビ取付け穴の真後ろの機械仕上げされた面に刻印してある。その他のエンジンでは助手席側シリンダーヘッド前部の機械仕上げされた面に刻印してある。1953年式ではまず"LAY"というプリフィックス(接頭辞)に6ケタのシリアルナンバーが続く。このナンバーはVINとは一致しない。1954年式から1956年式の場合は同じくVINと一致しない7ケタのシリアル番号に「フリント(Flint)」製であることを表す「F」と年式を表す2ケタの数字が続く。例えば「F56」というのは"Flint 1956"(1956年フリント工場)ということである。

 1957年からは、エンジン番号の刻印はまず製造工場をあらわすアルファベット("F"は1966年までは"Flint"を、"V"は1966年以降の"Flint"を、"T"は"Tonawanda"を表す)から始まる事になった。続く3ケタもしくは4ケタの数字はエンジン製造の日付けを表す。最後の2ケタ(のちに3ケタ)の文字は数字であってもアルファベットであってもそれはサフィックス(接尾辞)ナンバーと見なされる。このサフィックスはエンジンの用途を示している。例としては「F0112RF」とあればその解釈はフリントで(F)、1月12日に製造されていて(0112)、フューエルインジェクション(RF)、という事になる。

 サフィックス・ナンバーは重要で、ナンバーズマッチングコルベット(a numbers-matching Corvette)であるかどうかの判定において考慮の対象となるもののひとつである。
(訳者註:ナンバーズマッチングコルベットとは工場をライオンオフされたときのオリジナルな状態のコルベットの事、という理解でいいでしょう。エンジン、ミッション、デフ、ボディなんかを変えて無ければそれぞれの刻印、プレートなどの番号が全部マッチする筈だから『ナンバーズマッチング』という訳です)
コルベット用エンジンのサフィックスナンバーは殆どの場合コルベット専用のものになっている筈である。サフィックスを含むエンジンナンバーはその製造過程で工場のオッサンの手によって打刻される。そのオッサンはいくつかのナンバー打刻セットを持っておりエンジンがアッセンブリーラインを運ばれてくるに従って常時その打刻セットを取っ替え引っ替えして打刻しまくっているのである。そんなんで間違ってエンジンに打刻しないかって?勿論そういう事が起こる。では間違って打刻してしまったと分かった時にはどうすのか?いや、エンジンをスクラップにしたりはしない。間違って打刻された数字はペンシル・グラインダーで削り取られてその上に正しい数字が新たに打刻されるのである。

 コルベットのエンジンが組立てられた時、エンジン工場側ではそれがコルベット用だという事はわかるが、それぞれがどのコルベットに取り付けられるのかというところまでは関知しない。次にコルベット組立て工場でそのエンジンがある車に搭載された時点でその車のVINの連続番号の部分を含んだ別のナンバーがそのエンジンに刻印されてその車のボディとシャシーと関連づけられたものになる。そのナンバーはサフィックスナンバーと同じ場所に打刻される。この方式は1960年の製造年度内に始まり現在でも続いている。他のいかなる数字よりも、このエンジンナンバーが車のVINにマッチしている事こそがコルベットの「ナンバーズマッチング学」の主要な構成要素となっているのである。そしてこれがまた「偽ナンバーズマッチング・コルベット」において真っ先に偽造される部分でもあるのである。

 コルベット・ブラックブックはエンジンの「ブロックナンバー」についてもリストを挙げている。これは鋳造工場においてエンジンブロックに鋳込まれた7ケタまたは8ケタの数字のことである。コルベットのエンジンのサフィックスは大体常にコルベット専用ではあるが、同じベーシック・エンジンブロック・キャスティングがしばしば他のシボレーやGMの車にも使用された。にも関わらずこれはコルベットを認証する上におけるもうひとつの要素なのである。6気筒コルベットの完全なキャスティングナンバーはフューエルポンプのすぐ下前方に位置している。V8エンジンの場合は完全なキャスティングナンバーはフライホイール取付部近くの運転手席側ブロックの後方上部に位置している。近年のV8ではブロックキャスティングナンバーの最後の3ケタの数字をV8エンジンの中央部側でも見つける事が出来る。

 コルベット・ブラック・ブックにある「ヘッド・ナンバー」とはシリンダーヘッドのキャスティングナンバーのことを示している。このナンバーは通常はバルブカバーを取り外した場合にのみ確認する事ができる。

 「キャブレター」、「ディストリビューター」、「ジェネレーター」、「オルタネーター」、「スターター」などを含む他のナンバーもリストアップされているがこれらは全てエンジンコンポーネントである。故障の可能性は常にあるので或るコルベットの生涯においてこれらのコンポーネントのいずれかが交換されているという事は全然珍しい事では無い。こういった事も正確かつ完璧を期した出版をする上では最も困難なところである。一般的に言って、そのコルベットが古ければ古いほど「コルベット・ブラックブック」に記載されている各ナンバーのリストはより正確である場合が多い。これはエンスージアストはより古いモデルに興味を持ち、その調査はエンスージアスト達や組織(訳者註:NCRSみたいな団体のことを指していると思われます)によって行われたからである。新しいモデルほどそこまで精査されていないという事と、また新しいコルベットの込み入ったエンジンベイの中で各コンポーネント類のナンバーを観察するのが困難であるという事も調査書類の作成をより困難なものにしているもうひとつの理由である。

 いくつかのモデルイヤーにおいて表記してあるもうひとつのナンバーカテゴリーは「最終VIN」(ending vehicle number)である。これは単純にその月の最後の日に生産された最後のコルベットのシリアルナンバーである。この情報は全ての年式において解明されているという訳ではなく、またいくつかの年式においては部分的なデータが存在しているだけである。もしリストの中で特定の月が無い場合それはその月に一台も生産されなかったか、その月の生産記録がわからなかったかのどちらかである。

 「コルベット・ブラックブック」では特に言及していないもののひとつひとつのコルベットが日付けコード入りパーツの記録を持っている事になる訳だが(訳者註:変な表現ですがつまりエンジン、トランスミッション、デフなどひとつずつナンバーを読み取ればそれぞれの製造日が特定出来る、という意味でしょう)、その中でひとつだけとりわけ重要でここで説明する価値があるのは「ブロック・キャスティング・デート・コード(block casting date code)」だろう。これはそのエンジンブロックが工場で鋳造された日を示す日付けコードである。明らかにこのコードはエンジン製造日にも車自体の製造日にもマッチしない。しかしそれはエンジンと車自体の製造に先立った日でなければならない。6気筒コルベットの日付けコードはエンジンブロックの助手席側、スターターソレノイドの近所にある。V8エンジンの場合は殆ど日付けコードはブロックの助手席側後ろ、キャスティングナンバーの近所にある。例外としてはまず1965年から1968年及び1969年初期のビッグブロックでこれらの日付けコードは助手席側のスターター前方フリーズプラグの近所にある。続いて1965年のスモールブロックのキャストナンバー#3858180(トナワンダ工場で鋳造されたもののエンジン自体はフリントで組立てられた)で、これの日付けコードはキャスティングナンバーに隣接している。

 この日付けコードは先頭がアルファベット、それに2つまたは3つの数字が続く全体が3つまたは4つの文字列で表されている。アルファベットは月をあらわしており、「A」が「1月」で以下、「12月」を表す「L」まで続く。日はアルファベットの次の一つまたは二つの数字で表される。年度は最後の一つの数字で表される。日付けコードの「B129」はそのエンジンブロックが1959年か1969年か1979年か1989年の2月12日に鋳造された事を表しているのである。


訳者註:こういうエンスー向けの本としては他に"Catalog of Corvette ID Numbers 1953-93 (Amos Press Inc/ISBN 1-880524-08-2)"という横綱級の本があります。ここに書いてある内容はNCRS(=National Corvette Restorers Society)コンテストに出展する様な人が必要としている様なものかも知れませんが普通のコルベットオーナーも結構楽しめます。私はこの本で自分の81年式ゴージャスジョージ号が実際には1980年の9月2日に生まれており(コードB02)、もともとは白色(コード10)の車だったという事実を知りました。この本もお薦めです。それにしてもアメリカの一部のコルベットマニアのビョーキぶりには驚かされますが、実はアメリカにはコルベットに限らず "Fact Book" という様に呼ばれるビョーキ的なエンスー本は多いようです。シボレー関係でもそんな本を何冊か入手しました。いつか御紹介したいと思います。